経営マガジン 2019年11月号
急に寒くなってずいぶん秋らしくなりました。
というか、気温の変化が急なので、
秋がなくて急に冬に突入した感じですね。
体調を崩している方も多いので、
みなさまもくれぐれもご体調にはお気をつけください。
さて、少し前の話になりますが、
お笑い芸人のチュートリアル・徳井義実さん(44歳)が、
約1億1,800万円の所得の申告漏れを東京国税局から指摘されたことが
ニュースになっていたかと思います。
https://www.yoshimoto.co.jp/corp/news/media/media191026_2.html
人気があって社会的にも影響力のある方に、
このような出来事があったということで、
すごく驚きましたが、今日はこのニュースから、
会計・税務に関してどんなことが分かるのか
をお伝えできればと思います。
1)徳井さんの所得は?
まずは以下の情報から、徳井さんの所得が分かります。
申告漏れ金額約1億1,800万円
2016年3月期~2018年3月期の3年分
⇒ 年平均約3,900万円の所得
これは簡単ですね。
ただ、よく誤解をされる方も多いのですが、
「所得」と「収入」
は異なります。
「所得」とは
「税務上のもうけ」
のことであり、
「収入」から「経費」を引いた後の金額です。
2)徳井さんの年収(収入)は?
徳井さんの「収入」は
1)の「所得」3,900万円に
「経費」の金額を足すことで逆算できます。
経費の金額はここから正確な金額は読み取れませんが、
この3年間において、否認された経費が約2,000万円あったということなので、
仮にその倍の4,000万円が3年間の経費だったと仮定します。
(否認された経費が2,000万円というのも一般人の感覚からすると多いですが、
業務に関係のない私的な支出、主に旅行代や衣服代、飲食代だと思われます。)
またこれに加えて、会社から徳井さん個人に払う役員報酬も経費になっているので、
それを加える必要があります。
ただ、この役員報酬の金額は定かではないので、
これも仮の金額で計算したいと思います。
仮に、会社から役員報酬を年に1,000~2,000万円もらっていたとするならば、
(所得 1億1,800万円+経費 4,000万円)÷ 3年+ 役員報酬 1,000~2,000万円
= 約6,200~7,200万円
くらいが徳井さんの正味の年収(タレント活動に基づく収入)だった可能性があります。
以前最高月収が700万円だったという発言もあったみたいなので、
このくらいかもうちょっと高いのかもしれまん。
3)なぜ会社を作ったのか?
今回徳井さんは、
株式会社チューリップ
という一人会社を2009年に設立し、
タレント活動に基づく収入はすべてこの会社に入れて、
徳井さんはこの会社から役員報酬を受領していました。
なぜこのようなことをしたのでしょうか?
これは、所得の金額が高くなると、
個人の方が税金が高くなってしまうため、
節税のために会社を設立しているからです。
具体的に計算すると、
所得が年間3,900万円のとき、
個人の税金(所得税と住民税)は
次のように計算されます。
所得税:3,900万円×45%-479万6,000円=約1,275万円
住民税:3,900万円×10%=390万円
合計:約1,665万円
と所得の約40%が税金となります。
一方、会社の税金(法人税等)は次のようになります。
400万円×約23%+7万円=約100万円
(800万円-400万円)×約25%=約100万円
(3,900万円-800万円)×約37%=約1,150万円
合計:約1,350万円
と所得の約35%が税金となり、300万円くらい税金が安くなります。
これは、個人の税金(所得税)は
「累進課税」
といって、所得が増えれば増えるほど
税率が高くなる仕組みになっているからです。
(税率の階段)
195万円まで 5%
330万円まで 10%
695万円まで 20%
900万円まで 23%
1,800万円まで 33%
4,000万円まで 40%
4,000万円超 45%
+
住民税 10%
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
このような仕組みとなっているため、
高額所得者は節税のために会社を作ったりします。
会社は所得税の代わりに「法人税」というものを払います。
実際は法人税以外に、
法人税
地方法人税
法人住民税
事業税
地方法人特別税
というように、いろいろな税金を支払うのですが、
中小企業の税金はおおむね、
(税率の階段)
400万円まで 約23%+7万円
800万円まで 約25%
800万円超 約37%
となっていて、住民税も含まれているので、
高額所得者は、会社にした方が税金が安くなるということになります。
また、会社から役員報酬を支払うことで、
個人で直接もらうより、税金をさらに安くすることもできています。
(給与所得控除という制度があり、これにより更に税金が安くできます)
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少し長くなってしまいましたが、
いずれにしても、今回のニュースは、
しっかりと納税意識をもたないと痛い目にあう
ということがよく分かったのではないかと思います。
徳井さんは今回の件で信用を失っただけでなく、
いろいろなことが世間にも知れてしまい、
大変だったろうと思います。
日本で暮らす以上、
納税については
「知らなかった」
では済まされません。
ただ、日本の税金の制度は複雑で難しいにもかかわらず、
学校では教わらないことなので、
不安なことなどがあったら、
是非税理士等に問合せをするようにしてください!
さて、「経営マガジン」の11月号を
お届けさせていただきます。
本冊子には「データで見る経営」「今月の数字」といった
ビジネスの指針となるデータに基づいた解説を中心に、
「経営者インタビュー」などビジネスに役立つ情報をそろえておりますので、
少しでも皆さまの経営の参考になれば幸いです。
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【経営管理マガジン2019年11月号】
◆経営トピックス
何もせずに高報酬?
大きなリスクを伴う“取締役の名義貸し”
◆データで見る経営
海外進出する際、
『現地法人化』と『支店化』どちらがよい?
◆税務・会計2分セミナー
節税保険が販売休止!
今後、経営者が取るべき節税対策とは?
◆労務ワンポイントコラム
『BCP』で災害などの緊急時における
社員への対応を決めておこう!
◆社長が知っておきたい法務講座
パート従業員の解雇に際し
知っておくべきポイントとは?
◆増客・増収のヒント
見込み顧客を評価する?
『スコアリング』が増収に必要な理由とは
◆経営なんでもQ&A
従業員の発明に対して
報奨金を支払う必要はあるのか?
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