東京都台東区上野のクラウドに強い税理士・公認会計士事務所「あしたの会計事務所」

新社長のための「源泉所得税の基本知識」

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今回のテーマ「源泉所得税」について説明させていただきます、東京都台東区のクラウドに強い税理士・公認会計士の白根と公認会計士の長瀬です。皆さまに抑えておいていただきたい源泉所得税の知識のうち、会社を設立したばかりの社長に知っておいていただきたい基本知識をご案内するコラムです。

この知識は個人事業主・法人共通です。源泉所得税については税務署がかなり厳しくチェックしているため、開業間もなくても知っておくべき重要事項です。

<目次>

  1. 概要
  2. 源泉徴収義務者と源泉徴収の対象となる所得
  3. 源泉徴収事務の流れ
  4. 源泉所得税の納付期限
  5. まとめ

 

会社を設立したばかりの社長に知っておいていただきたい基本知識(源泉所得税)

1. 概要

会社もしくは事業者が従業員や取引相手(個人)に給与や報酬を支払う際に、支払いの都度一定の所得税及び復興特別所得税を天引きすることを「源泉徴収」といいます。基本的に、個人に対する支払いが対象となります。

会社もしくは事業者は給与や報酬を受け取る納税者に代わって税務署に納めます。この所得税のことを「源泉所得税」といいます。いわば「従業員や取引相手(個人)の所得税を会社が税務署に前払いする制度」であるといえます。

国が税金を徴収することが一般的ですが、源泉所得税は支払い側にあたる会社もしくは事業者が税金を徴収して納付する義務を負います。

 

2. 源泉徴収義務者と源泉徴収の対象となる所得

(1) 源泉徴収義務者

① 法人の源泉徴収義務
会社等の法人が従業員を雇って給与を支払ったり、税理士などに報酬を支払ったりする場合には、源泉徴収義務者に該当します。

② 個人の源泉徴収義務
個人が従業員を雇って給与を支払ったり、税理士などに報酬を支払ったりする場合には、原則として源泉徴収義務者に該当します。ただし、下記のいずれかに該当する場合は、源泉徴収をする必要がありません

◆常時2人以下の家事使用人(お手伝いさん)のみに給与や退職金を支払っている
◆給与や退職金の支払がなく、税理士報酬などの報酬・料金だけを支払っている(例えば、サラリーマン等の給与所得者が確定申告などをするために税理士に報酬を支払っている場合)

 

(2) 源泉徴収の対象となる所得

① 源泉徴収が必要な所得(給与所得)

1.給与
従業員や役員に支払う俸給や給料、賞与など
よく勘違いされている方がいますが、役員報酬からも源泉所得税を徴収しないといけません。従業員やアルバイトへの給与だけと誤解されている方がいらっしゃいますのでご注意下さい。

2.通勤手当
非課税の限度額内の場合には源泉徴収不要となります。

【1.電車やバスだけを利用して通勤している場合】
非課税の限度額は電車やバスを利用して、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。新幹線を利用した場合でも「経済的かつ合理的な方法による金額」とみなされますが、グリーン券は含みません。

【2.マイカーや自転車なども使って通勤している場合】
マイカーや自転車などを使って通勤している人の通勤手当の非課税限度額は距離に基づいて下記の通り決められています。

(参考)マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額の表

片道の通勤距離 1か月当たりの限度額
2キロメートル未満 (全額課税)
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,100円
15キロメートル以上25キロメートル未満 12,900円
25キロメートル以上35キロメートル未満 18,700円
35キロメートル以上45キロメートル未満 24,400円
45キロメートル以上55キロメートル未満 28,000円
55キロメートル以上 31,600円

 

【3.電車やバスなどのほかにマイカーや自転車なども使って通勤している場合】

交通機関を利用する場合の通勤定期券などの金額と上記のマイカーや自転車などを使って通勤する場合の非課税限度額を合計した金額となります。

【4.通勤手当の限度額】

上記については限度額があり、1ヶ月あたり15万円が上限となります。
この非課税限度額は、平成28年度の税制改正で18年ぶりに見直しが行われ、これまで月10万円だったものが、一気に月15万円までが非課税枠になりました。 また適用については、平成28年1月1日以降に受けるべき通勤手当に遡って適用されるので、実務的には注意してください。

【注意点】

1か月当たりの非課税となる限度額を超えて通勤手当や通勤定期券などを支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。この超える部分の金額は、通勤手当や通勤定期券などを支給した月の給与の額に上乗せして所得税及び復興特別所得税の源泉徴収を行う必要があります。

(参考)
国税庁HP 通勤手当の非課税限度額の引き上げ(PDF)
国税庁HP No.2582 電車・バス通勤車の通勤手当
国税庁HP No.2585 マイカー・自転車通勤車の通勤手当

 

② 源泉徴収が必要な所得(給与所得以外の報酬・料金等)
源泉徴収が必要な報酬や料金等は、原則として支払う相手が個人の場合になります。

具体的には下記の報酬や料金について、源泉徴収が必要になります。
非常に細かくて分かりにくいので、税理士や税務署に相談してしまうことが得策といえます。

  1. 原稿料講演料など
    ただし、懸賞応募作品の入選者などへの支払については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
  2. 弁護士公認会計士司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロ野球選手プロサッカーの選手プロテニスの選手モデル外交員などに支払う報酬・料金
  5. 芸能人芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  6. ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステスコンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  7. プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  8. 広告宣伝のための賞金馬主に支払う競馬の賞金

 

(参考)
国税庁HP No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
国税庁HP No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき

 

3. 源泉徴収事務の流れ

源泉徴収事務を進めるには作業の流れがあります。これらを押さえて効率よく進めていきましょう。

 

(1) 源泉徴収の事務手続

ここでは、給与所得の場合の事務手続を記載します。給与所得以外の報酬・料金等の場合には、給与所得の場合に要する特別な手続きはありません。

① 給与支払事務所等の開設届出書の提出
会社や事業者が給与の支払いを開始する場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を給与支払事務所等開設から1ヶ月以内に税務署に提出しなければなりません。源泉徴収義務者になることを税務署に宣言する書類です。

② 給与所得者の扶養控除等申告書の入手
従業員に扶養親族の状況等を記載した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、会社内に保存します。源泉徴収の税額は、給与金額と従業員の扶養人数に基づき、テーブルにより決定しますので、毎年最初の給与を支払う前(実務上は、入社時と年末調整時)にこの申告書を入手しないと正しい税額が分からないのです。

③ 源泉所得税の徴収と源泉徴収簿の記入
給与の支払時には源泉所得税額を天引きしますが、その税額は、「給与所得者の源泉徴収税額表」というテーブルで定められています。詳しくは「(2)源泉所得税額の計算」をご確認下さい。
また、従業員個人別にいくらの給与を支払い、源泉所得税の徴収を行ったかを管理する必要があります。
その際に利用するのが、「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」です。

 

(2) 源泉所得税額の計算

① 給与所得の場合
給与所得の源泉徴収額は毎年国税庁のHPで公開されています。源泉徴収税額はこちらの源泉徴収税額表でご確認いただけます。
なお、このテーブルにおける給与の金額は社会保険料等を差し引いた後の金額であることにご注意下さい。

(参考)
国税庁HP 平成28年分 源泉徴収税額表

 

② 給与所得以外の報酬・料金等の場合
厳密には報酬の種類に応じて、若干の相違がありますが、原則として下記の通りです。

報酬・料金等の金額 源泉徴収税額
100万円以下 報酬・料金等の額×10.21%
100万円超 (報酬・料金等の額-100万円)×20.42%+100万円× 10.21%

100万円超の場合の算式が少し複雑に見えますが、簡単に説明すると報酬・料金等の金額のうち、100万円までの部分は10.21%、100万円を超える部分(例:120万円の場合は20万円)は20.42%の源泉所得税を徴収する必要があるということを意味しています。

 

4. 源泉所得税の納付期限

(1)納付期限

① 原則
給与の支払いに関する源泉所得税は、給与を支払った月の翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。給与は毎月支払うと思いますので、原則として毎月10日に支払わないといけません。

② 特例
給与の支給人員が常時10人未満である場合で、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収した所得税を半年分まとめて納付とすることができるという特例制度があります。この場合の納期限は以下の通りです。

◆1月~6月に徴収をした源泉所得税・・・7月10日
◆7月~12月に徴収をした源泉所得税・・・翌年1月20日

(参考)
国税庁HP No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

 

なお、この適用を受けるときは『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』を税務署に提出しなければなりません。原則として、提出した日の翌月に支払う給与から適用されます。
適用できる場合は、迷うことなく特例の適用を受けましょう。資金繰りと事務手続が非常に楽になります。

ただし、ここで1点注意が必要です。

『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』で源泉所得税の納付を年に2回にまとめることができるのは「給与や退職手当、税理士等の報酬・料金」に関する源泉所得税だけです。つまり、原稿料や外注先に支払う報酬・料金に関する源泉所得税は原則通り、支払った月の翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。これは本当によくはまる落とし穴なので、気を付けましょう。

 

(2)納付期限に間に合わないと

税務署は本当に厳しいです。残念ながら、1日でも延滞すると納期限の翌日から延滞税や不納付加算税がかかります。しかも、これがものすごく厳しいペナルティーです。
せっかく頑張って稼いだ大切なお金なのですから、こんなところで損しないように納期限は必ず守りましょう。
延滞税の恐ろしさを知っていただくために、ご参考としてどのくらいかかるのか記載してみました。

 

【延滞税】
法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて次の割合により延滞税が計算されます。

<納期限の翌日から2月を経過する日まで> 平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、「2.8%」

<納期限の翌日から2月を経過した日以後> 平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年「9.1%」

本当に高いですね・・・。納付期限は必ず守りましょう。

(参考)
国税庁HP No.9205 延滞税について

 

5. まとめ

いかがでしたか?会社を作ると源泉所得税はすぐに立ちはだかる、避けては通れない壁です。「知らなかった」というだけで、後から痛い目に遭いやすい税金ですので、ここに記載の知識をしっかり吸収しましょう。不安でしたら早めに税理士にぜひ相談しましょう。

また、少しでも参考になるようでしたら、この記事をシェアをしていただけますとうれしいです^^

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